旧カミクズヒロイ

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発売記念キャンペーンもいい感じで盛り上がってきている双風舎の『バックラッシュ!』。すでに公表されている目次まえがきからもわかるように、『バックラッシュ!』では「ジェンダーフリー」という言葉が登場してからのここ10年くらいの状況を扱っている。

さて、いわゆる「バックラッシュ」側が好んで使う言い方に、「日本の伝統が云々」というものがあるようだ。では、実際、日本にはどんな伝統があるのだろうか。それについて扱った本の中に、脇田晴子著『中世に生きる女たち』がある。

中世に生きる女たち (岩波新書)

中世に生きる女たち (岩波新書)

目次

	はじめに

序章	王朝文学の女性像
	一	『新猿楽記』の三人の妻──母性と家政と性愛と
	二	『かげろふ日記』の著者の嘆き
	三	『源氏物語』の女君たち
	四	嫁取婚と「家」の成立
I	公家の女房
	一	阿野廉子――後醍醐天皇寵愛の女房
	二	政務に活躍する女官たち
	三	女房奉書と女房詞
	四	女訓書の説く女房の理想像
	五	後深草院二条――宮廷の女房生活からはみだした女性
II	武士の妻たち
	一	北条政子――正妻の典型
	二	日野富子の虚像と実像
	三	能狂言や説話にあらわれた妻たち
	四	変わりゆく妻の地位
	五	豊臣家最後の主――北政所ねね
III	尼僧の生涯
	一	『平家物語』の悲劇の女主人公
	二	信仰に生きる尼僧
	三	出家させられた女たち
	四	「家」を守る後家の尼
	五	尼寺の商売
IV	女商人と庶民の生活
	一	女は何をつくって何を売っていたか
	二	座を牛耳る京女
	三	女たちの生活空間
終章
	一	中世女性史の視点
	二	母性尊重と罪業観
	三	嬰児殺しと子売り
	四	愛別離苦の世を守る神々

	あとがき

この本は、「中世に生きる女たち」を通して、鎌倉から戦国時代にかけての女性や家の有り様を描き出している。この本の紹介にもっとも適した一節がそのあとがきの中にあるので、ここに引用しておこう。

わたしは、前近代社会では男女差よりも身分差の方が強く、同一身分のなかではじめて男女差が顕現すると思っている。近代社会のなかで一応の四民平等が成立したとき、男女差が強く意識されるのだ。

伝統に言及する前に、また『バックラッシュ!』とあわせて読むのに(おそらく)おすすめの一冊。6月26日を待つ間にも。