都城男女共同参画条例問題の傾向と対策 - 「修正案」の要点
都城市の関連ページ。
この件のパブリックコメントについて。
およそ17万のの人口を擁する都城市のパブコメにして、投稿は驚異の63件。
集計結果のページの「パブリックコメントに対して提出されたご意見等及びそれに対する市の考え方」と題された(HTML 的には題になってないが)表の一番下の行(「条例全般に関して」)に、これまでの経緯についても説明がある。
- 意見等の内容
- ☆男女共同参画条例の内容を、検討の過程も含めて市民に詳しく公表すべきである。
- ☆条例の内容については、合併や時代に合わせて、修正は必要かと思いますが、基本的な部分は旧都城市の条例のままでいいと思う。ただ、男女共同参画に関心のある人だけが条例の内容を知っていても意味がないので、広く周知を図ることが必要である。
- ☆性的少数者は現に存在しており、まだまだ声が上げられない人も多くいる。旧都城市の条例がそのままの形で残ることを願います。
- 市の考え方
- ★平成18年1月からパブリックコメント制度が導入されたことに伴い、この条例の制定に関しては、制度にのっとって、市の情報公開コーナーや指定の閲覧場所、市のホームページなどで案や経緯などを公表し、ご意見をいただいたところです。その後、15名の委員からなる都城市男女共同参画社会づくり懇話会で検討していただき、市役所内での協議等を踏まえて、今回の市の考え方及び、修正箇所の公表となったところです。今後も、広報紙やホームページなどを活用して情報発信を行います。
旧都城市においては、平成16年4月から、条例が施行されていたところですが、平成18年1月の合併に伴い失効しました。今回、合併協議の決定に基づいて、旧都城市の条例を案として検討を重ね、基本的考え方及び条例に盛り込む基本理念等については、概ね旧都城市の条例を引き継ぐ形の案がまとまったところです。
性的少数者は現に存在しており、…そのままの形で残ることを願います。
…という意見に対して、概ね旧都城市の条例を引き継ぐ形の案
…が答えか。
用語の定義が曖昧なままやりとりが行われているように見えるのも気になるところ。「性差」「区別」「差別」「差異」「特性」「平等」…など。
条例第14条に対する意見として、この条文があることによって、性的少数者の方が、教育の場に立つ事も考えられる。一般の市民に受け入れられるのか。
…、という意見が挙げられているが、旧条例第14条は以下の通り。
(性別等による権利侵害の禁止) 第14条 何人も、職域、学校、地域、家庭その他のあらゆる分野において、性別等によ る差別的取扱いをしてはならない。 2 何人も、職域、学校、地域、家庭その他のあらゆる分野において、特定の者に対し、 その者の意に反する性的な言動により、その者に不利益を与えたり、就業、教育、生活 その他の環境を害してはならない。 3 何人も、配偶者その他の親密な関係にある者に対して、身体的又は精神的な苦痛を与 える暴力的行為をしてはならない。
何が問題だと思っているのだろう! ほか、典型的なわかりやすい反動的保守的意見が多い。
「条例(案)の修正箇所」の要点をいくつか見ていく。
差別がある状況下で、「すべての人」という表現で全てを包括しようとすることは、問題の隠蔽・助長につながる。「すべての人」という語句を優先し、それで包括できると考える場合でも、たとえば「性別・性自認・性的指向によって「すべての人」から排除されることはない」といった注釈を加えるべきだろう。現に差別・偏見が存在することの証拠は、パブリックコメントに表出している。
☆「性的指向にかかわらず」という表現は必要ないのではないか。主語は「男女」でいいのではないか。
☆性的少数者の人権を条例で認める必要はないのではないか。
☆この条文があることによって、性的少数者の方が、教育の場に立つ事も考えられる。一般の市民に受け入れられるのか。
次。
- 第4条(社会における制度又は慣行についての配慮)
- 修正内容
- ☆「社会における制度」→「社会通念」としました。
- ☆「すべての人の社会における活動の選択に対して及ぼす影響を出来る限り中立的なものとする」→「すべての人の社会における活動の自由な選択に対して影響を及ぼすことのないように」としました。
- 理由
- ★前文における表現と一貫性を保つためです
- ★表現をわかりやすくするためです。
旧条例の前文において「社会通念」が出てくるのは以下の部分。
本市においても、これまで個人の尊厳及び人権の尊重のため、男女平等の推進その他の さまざまな取組を進めてきたが、その実現を妨げるような性別による固定的な役割分担等 を反映した社会通念や慣行などが根強く存在し、なお一層の努力が必要とされている。
「社会通念」では、差別的な構造があることを隠蔽し、意識の問題に矮小化することにならないか。統一するなら、前文を第4条に合わせた方がいい。
旧条例の第4条は以下の通り。
(社会における制度又は慣行についての配慮) 第4条 男女共同参画社会の形成に当たっては、性別による固定的な役割分担等を反映し て、社会における制度又は慣行がすべての人の社会における活動の選択に対して及ぼす 影響をできる限り中立的なものとするように配慮されなければならない。
修正案はわかりやすいと言えるだろうか。
次。
- 第6条(多様な活動へ携わる機会の確保)
- 修正内容
- ☆「性別にかかわらず多様な活動に携わる機会を確保するため」→「すべての人が多様な活動に携わることが出来る機会を確保する」としました。
- 理由
- ★主語を明確にし、わかりやすくするためです。
そもそも性差別をなくすための男女共同参画政策なのだとすれば、「性別にかかわらず」を「すべての人が」に変えて 主語を明確にし
…と言えるのか。
次。
- 第7条
- 修正内容
- ☆「性と生殖に関する権利及びそれに基づく健康への配慮」→「生涯にわたる女性の健康への配慮」としました。
- ☆「身体的特徴についての理解を深め、」の後に「法令に定める場合を除くほか」という表現を加えました。
- ☆「妊娠、出産その他の性と生殖に関する事項」→「妊娠、出産その他の事項」としました。
- ☆「生涯にわたり健康な生活を営む」→「生涯にわたり健康で健全な生活を営む」としました。
- 理由
- ★国の基本計画の内容に準じ、妊娠・出産等に限らず幅広く女性の健康に配慮する表現とするためです。
- ★母体保護法等、出産等に係る法令を遵守することが前提であることを表現するためです。
- ★国の基本計画の内容に準じ、妊娠・出産等に限らず幅広く女性の健康に配慮する表現とするためです。
- ★健全なという表現を加えることにより、身体的のみならず精神的な健康にも配慮するためです。
旧条例の第7条は以下の通り。
(性と生殖に関する権利及びそれに基づく健康への配慮) 第7条 男女共同参画社会の形成に当たっては、すべての人が、それぞれの性にかかわる 身体的特徴についての理解を深め、妊娠、出産その他の性と生殖に関する事項について 自らの意思が尊重されたうえで、生涯にわたり健康な生活を営むことができるように配 慮されなければならない。
リプロダクティブヘルツ/ライツに関する部分。修正内容を適用すると以下のようになるだろう。
(生涯にわたる女性の健康への配慮) 第7条 男女共同参画社会の形成に当たっては、すべての人が、それぞれの性にかかわる 身体的特徴についての理解を深め、法令に定める場合を除くほか、妊娠、出産その他の事項について 自らの意思が尊重されたうえで、生涯にわたり健康で健全な生活を営むことができるように配 慮されなければならない。
幅広く女性の健康に配慮する
必要があるなら、別に条項を立てるか、少なくとも「妊娠、出産その他の性と生殖に関する事項を含むが、それに限定されない」といった注釈を加えるべきではないか。「権利」が消えているのはなぜか。条例が法律を前提にするのは自明のことだろうから、法令に定める場合を除く
…といった文言をしかもここにだけ加えるのは、単に空文で文を薄めるだけではないか。また、健康という熟語は健体康心という文からきているといわれるように、その概念は精神衛生をも含みうるものである。精神的な健康
を明示的に含めたいなら、たとえば「心身の健康」でいいのに、わざわざ整わない文にする意味がわからない。